元祖勝浦式担々麺 江ざわ 《勝浦市》
(「月刊ぐるっと千葉」2019年2月号掲載)
※掲載内容は取材当時のものです。営業時間、メニューなどは現在変更になっている場合があります。また、閉店になっている店舗もありますので、ご注意ください。

「坦々麺」。言わずと知れた「勝浦タンタンメン」の元祖。鶏ガラ・豚ゲンコツ・魚介から採った出汁と自家製のタレをブレンドしたスープの上質なうま味が、パンチ力のある辛みとせめぎ合う。味の決め手は、店自らが「『江ざわ』のノウハウの結晶」と胸を張る手作りラー油。炒める温度に注意する等、緻密な工程を経て生まれる香りは、忘我の境地に陥るほど芳醇。
泣く子も黙る 「勝タン」の元祖。 味を守る覚悟から ほの見える矜持
「『江ざわ食堂』という大衆食堂を営んでいた初代が、辛いラーメンを作ってみようと、昭和29年に開発したのがこの1杯。初代は進取の気性がある人でして」と笑う先代。 提供当時から長らく「江ざわ食堂の担々麺」の呼称で親しまれてきたこの1杯が、やがて「勝浦タンタンメン」と名付けられ栄華を極めるとは、一体誰が想像できただろうか。初代の慧眼に感服するほかない。現在、『江ざわ』を取り仕切るのは3代目。「父祖から受け継いだ味を守ることが使命です」。力強い口調から、名店の主としての矜持がほの見えた。
〈江澤文彦・正紀 店主親子インタビュー〉
田中(以下田):『江ざわ』の「担々麺」は、今でこそ勝浦タンタンメンの「雄」たる地位を占めていますが、「勝タン」という呼称が定着する前は、決してそうではなかったと思うんです。作る側からすれば、地域名(「勝浦」)を商品に付すこと自体、あまりない発想ですしね(笑)。
先代(以下文):そもそも、当店の「担々麺」は、父(初代)が「辛いラーメンでも作ってみようかな」と言って開発したもの。父は進取の気性に富む人でしたからね。昔は漁師町に店を構えていましたので、漁師や海女さんが、「辛い食べ物は身体が温まる」と、店に足を運んでくれるようになった。地域の方々からは「江ざわ食堂の担々麺」と呼ばれ、親しまれていましたね。
田:初代の担々麺が地域のニーズに合致したんですね。勝タンを提供する店舗が増えていったことには、そんな背景があったのか!
当代(以下正):先代の跡を継いで痛感したことがあります。それは、地域の方々から愛されることの大切さ。店内に掲げている暖簾は、移転前の店舗のものなんですが、何かお気付きになりませんか?(笑)
田:あ、『元祖担々麺』の「担」の字が「坦」になってる!
正:そうなんです!「担々麺」の正確な表記は「担」ですが、「地元に根付くお店にしたい」と、敢えて土へんの「坦」を用いました。
文:暖簾を作る時には、どっちの字を使うか本当に悩んだよね。
田:暖簾の「坦」に、そこまでの想いが込められていたんですね。脱帽です。最後に、今後の抱負をお聞かせ下さい。
正:父祖から受け継いだ味を変えずに作り続ける。それが全てです。
田:作る側も三代にわたっていますが、それは食べ手も同じ。三代にわたって『江ざわ』の味を求めてくれているんですからね。頑張って下さい!
元祖勝浦式担々麺 江ざわ 《勝浦市》
住所 千葉県勝浦市白井久保296-8
営業時間 11:30~18:00(スープ終了次第閉店)
定休日 月曜(臨時休業あり)
駐車場 あり(11台)
お問い合わせ ☎090-4410-5798
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