
【FIGUE D’ADAM】我孫子市の農家、川井さんのいちじくを使った紅茶のブレンドティー。オリジナル缶45g2700円。「手土産になるものを作り、それをきっかけに我孫子のことを知ってもらえたら」との想いを込めて作られた。同農園のいちじくを使ったコンフィチュールや白樺派の文人ゆかりの地に因んだブレンドティー「アールグレイシラカバ」等も我孫子ならではの土産に最適
水辺の街の花と紅茶んお専門店
季節の情景をその香りの中に
手賀沼北岸のストリートに彩りを添える花々。フランスのアンティーク家具が設られた店内には芳しい紅茶に焼き菓子。贈り物を求める人たちの華やかなひとときと、道ゆく人々との情景がシンクロする。「生活の中に紅茶と花を。暮らしのエッセンスとエスプリを身近に」……花と紅茶の専門店「JUL et SWAN」が掲げる日常の豊かさが、目の前のワンシーンの中に滲み出ている。 「THÉ SWAN」として紅茶と焼き菓子、コンフィチュールを担うのは大塚健司さん。フランスに本社を置く紅茶店で働いてからその世界にのめり込み、独立して自ら茶葉の調合を行うようになった。妻の聖子さんは生花店やアパレルスタイリングの仕事を経て、フローリスト「MAISON DE JUL」として活動。2023年6月、健司さんが小中学生を過ごした我孫子市で、二人の商いを重ね合わせた念願の店を開いた。 まだ残暑が厳しかった9月。二人は我孫子市内にあるいちじく農園にいた。園内にはいちじくの甘やかで軽やかな果実感のある香りが漂っている。「ここは川井さんの農園です。市内の催しに出店していた時に、お客さんとして来ていただいたんです」。そう解説しながら二人はいちじくの〝葉〟を摘んでゆく。「実は葉も香りが良いんです」……そう、紅茶にブレンドするためのいちじくの葉を収穫しにやって来たのだ。川井さんが日常的にいちじくの葉でお茶を淹れていたことを健司さんが知るや、「紅茶とブレンドすると美味しいに違いない」と閃く。いちじくの栽培から見ても、養分の分散化を防ぐため芽かきが必要で、その際に不要となる葉が多く出てしまう。その葉を茶として再活用できるようになるのだ。 ドライにしたいちじくの葉は粉砕し、焙煎することで青臭さを消す。そして、紅茶葉とのブレンドへ。「今年のいちじくは水分量が多くさっぱりとした味わい。それを鑑みて調合します」。紅茶葉それぞれが持つ香り、渋み、いちじくの甘さ、瑞々しさ。調合で目指すのは「最良のバランス」だ。 完成した「FIGUE DADAM」。紅茶の風味の広がりの中に、いちじくの甘やかな香りがすっと鼻腔を抜けてゆく。例えばコスモスを揺らす秋風のように澄み切った、どこか懐かしい脳裏の情景と重なり合う。過ぎ去る季節の残り香に包まれながら、花々の健やかな装いを愛でる。そんなささやかなことが、本格的な冬が到来しようとも、じわりと心を温めてくれるに違いない。
(取材・文:沼尻亙司、撮影:織本知之)

1・2.川井さんの農園にて。9月初旬からいちじくの実が実りきる前までが収穫のタイミングとなる 3.摘んだ葉は洗ってから乾燥させる 4.紅茶にはいちじくの葉のほか、ドライにした実も加えて風味を整える 5.想の調合へはテイスティングが欠かせない 6.カップに注ぐや芳香な香りが立ち上る 7.アンティークに映える花々に、紅茶に合う焼き菓子やコンフィチュールも並ぶ。日常使いから特別な日の贈り物まで、様々なシーンに対応してくれる
住所 〒270-1147 我孫子市若松170-4-103
電話番号 080-4408-8787
営業時間 11:00-17:00 ※店内飲食なし。テイクアウトはあり
定休日 不定休
WEB https://www.fleur-et-the.jp
販売・お取り寄せ 店舗で販売、オンラインショプで受付
※2024年12月号に掲載
※掲載されている情報や写真については最新の情報とは限りません。必ず事前に公式サイト等でご確認の上、ご利用ください