【連載-いっぴんさん】御菓子司 角八本店の「みかん大福」(一宮町)

【みかん大福】1個380円。ギフトセットあり。完全に解凍した方がジューシーさが増すが、半解凍でシャーベット状の冷菓として楽しむ食べ方も。いちごのほか、シャインマスカット、メロン、バナナ、ブルーベリー、トマトなどの各フルーツ大福がある(期間限定品あり)。また、千葉県産落花生を使った「落花生くりーむ大福」も千葉土産として重宝されている。

果実を丸ごと包み込む!果汁弾ける一宮名物「みかん大福」

 「角八のみかん大福」といえば、今や九十九里・外房地域を代表する定番の和スイーツ。大福の中にみかんを丸ごと一個包み込んだ大胆な菓子ながら、真横から丁寧に包丁を入れれば、花柄のごとく美しい断面が顕れる。  もちろん、この大福の魅力は見た目だけではない。頬張るや口の中に溢れる瑞々しさ。果汁が滴るかのような感覚すらある。ジューシーさに驚きつつもじっくりと咀嚼すると、みかん特有の酸味が立ち過ぎておらず、餡と折り重なるまろやかな甘味が、柔らかな餅生地に包み込まれているのが分かる。  「甘さ、酸味、食感のバランスがとれていることが重要です。薄皮の部分が厚いと口に残りますし、酸味が強すぎるとそこが強調された風味になってしまいますので、大福に合うみかんというのを厳選しているんです」と教えてくれたのは角八本店七代目の薦田亮さん。大福と最良の相性をなすみかんを求めて、時季ごとに仕入れ産地を変えていくというこだわりようである。例年、大分産に始まり、愛媛、長崎、静岡と産地をリレーしていく。「この時期は贈答用になるみかんを使用しています」と、その味わいに太鼓判を押す。餅の生地には求肥粉と羽二重粉を合わせ、程よい柔らかさときめの細かさを生み出す。白餡にも滑らかさを求め、大福とフルーツの相性を追求した。  みかん大福と並ぶ人気商品「いちご大福」は「みかん大福」以前から作られていたという。「いちごの無い時期にいちご大福を求めて来店されるお客様に喜んでいただける商品がなにかできないか」と、先代がこれまでの技術を活かしてみかん大福を試作。2006年に商品化に漕ぎ着け、現在では角八本店の代名詞も言える品に成長した。  上総国一の宮として知られる玉前神社門前に店を構える角八本店。その歴史は少なくとも江戸時代中期まで遡れるという。現在はみかんやいちごの他にも、様々なフルーツの大福を開発して人気を博しているが、地域の歳時記に欠かせない伝統菓子や、「あんころ餅」といった昔からの郷土銘菓も変わらず作り続けている。「伝統を大切にしつつ、新しいものにチャレンジしていきたいですね」と、さらなる意欲を燃やす薦田さん。これからも、和菓子の新たな定番がここから生み出されてゆくに違いない。

(取材・文:沼尻亙司、撮影:織本知之)

1.取材日は約800個のみかん大福を製造。お盆前のピーク時はこれをさらに上回る 2.大福の一番外側の、餅生地を作る。柔らかさとコシのバランスが絶妙 3.並行して白餡を作る。滑らかさが上品な風味を演出する 4.みかんの外皮は一個一個手で剥く。中身を傷つけないよう、丁寧さが求められる 5.鮮やかな手捌きで餡、そして餅生地でみかんを包んでいく 6.手のひらで生み出される球体形の大福。その佇まいは愛らしくもある

店名 御菓子司 角八本店
住所 〒299-4301 長生郡一宮町一宮3012
電話番号 0475-42-2068
営業時間 7:00-18:00
定休日 木曜 ※臨時休業はHP参照
WEB https://www.kadohachi.co.jp/
販売・お取り寄せ 店舗で販売、webショップ、電話で受付

※2024年9月号に掲載
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