【連載-いっぴんさん】知久牧場の「せきやどミルク」(野田市)

プレーンの「せきやどミルク」を始め、「バニラ」や季節のアイスなど各種を用意。各100㎖350円。季節のフレーバーには、久利子さんの息子が栽培した「いちご」や、自ら養蜂した「蜂蜜」のほか、「とうもろこし」「いちじく」「ビワ」「サツマイモ」「カボチャ」など、野田の食材を使ったものが多数。全国900軒を食べ歩いたインスタグラマーユニット「matchatrip」とのコラボ「極上抹茶」「ほうじ茶」は香り高い逸品。

県内最北の酪農地域で
楽しく、おいしく、健やかな牛乳の魅力を届ける

 桜の便りが届く頃。江戸川の堤防に咲く菜の花が、景色の彼方まで黄色い線を描いている。利根川と、そこから分岐した江戸川に挟まれた旧関宿町。この千葉県最北の地は終戦後、鈴木貫太郎が土手を活用した牧草栽培に着目したことで酪農が盛んになった。最盛期には200軒の酪農家がいたが、現在は十分の一以下にまで減少している。そんな中、1961年に酪農を始めたのが「知久牧場」だ。  「牛舎は子供の遊び場。駆け回ってももう慣れてるので牛は驚かないですよ」と笑うのは、ここに嫁いできた知久久利子さん。就職が嫌で北海道の牧場で三年間修業。千葉の牧場を経て、千葉北部酪農農業協同組合で働いていた時、アパート暮らしだったにも関わらず「牛が好き過ぎて、引き取り手が見つからなかった仔牛を買っちゃいました」という、なかなかの破天荒ぶり。困った挙句に、その牛を引き取ってくれたのが知久牧場だったのだ。  知久牧場は循環型酪農を目指している真っ最中。先代の頃から牧草は土手で栽培。肥料には牛糞を使う。食品残渣を活用した飼料「エコフィード」も積極的に利用し、もやしの残渣は発酵粗飼料に。現在はにんじんのエコフィードにも取り組み始めている。そして、「牛たちの大好物」なのは酒粕。酒粕は整腸作用も期待できるのだそう。高タンパクな濃厚飼料だけでなく、こうした餌を活用していくことは、牛の健康づくりにも繋がっている。「搾乳の時間で牛に触れる時に、牛のご機嫌、体調が分かる」。久利子さんはそう語る。  「消費者においしさをどう届けるか」を考えた末、チーズ作りに着手した久利子さん。その後、コロナ禍で学校が一斉休校となり、牛乳が大量に余る事態となったことをきっかけに、アイスも作れないかと構想を巡らす。そんな矢先に出会ったのが、現在アイス作りを担当する藤村さん。農業とパティシエ、両方の経験を持つ逸材だった。試食させていただいたアイスはまず、ふわりと軽やかな食感に驚かされる。クセのない風味に、すっと牛乳の香りが鼻腔を抜けてゆく。健やかな牛と、藤村さんの腕前あってこその味わいである。  「酪農の世界に留まらず、いろんな人と一緒にやっていきたい」と現在、市内の洋菓子店「ドルチェ フェリーチェ エ」やカフェ「暇 イトマ」にバターや牛乳を提供したり、イベントでアイスも販売。「野田に牛屋があることを楽しく、おいしく知ってほしい」。その想いが久利子さんを突き動かす。

(取材・文:沼尻亙司、撮影:織本知之)

1・2.現在、約130頭を飼育。メインはホルスタインで、ジャージー種も飼っている 3.飼料には自給した牧草を中心に与える。酒粕は酒々井町の酒蔵「飯沼本家」から仕入れている 4.牧場の一角に設けられた加工場にて。搾りたての牛乳を注ぐ 5.ルピジャーニ社製のマシンでアイスを作る。藤村さんをスカウトする前から、機械だけは先んじて揃えていたという、久利子さんの積極さ 6.できたてのアイスを丁寧にならしていく

店名 知久牧場
住所 〒270-0214 野田市柏寺13 ※牧場での直売は行っていません。また、牧場は許可なく立ち入りはできません
電話番号 04-7196-1515
WEB https://sekiyadomilk.base.shop/
販売・お取り寄せ ●販売箇所/ゆめあぐり、田代新聞店、日野屋(各野田市)、あびこん(我孫子市)、トップ江戸川台店(流山市)で販売 ●お取り寄せ/webショップで受付

※2023年6月号に掲載
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