
【ピーナッツペースト】千葉県産の落花生を黒御影石のローラーですり潰したピーナッツペーストは、原材料が落花生だけの「無糖」、砂糖を加えた「加糖」、砂糖と砕いた落花生を入れた「加糖粒入り」の3種類。各Sサイズ680円(180g。無糖は170g)、Mサイズ885円(230g。無糖は220g)のほか、「加糖」と「加糖粒入り」は徳用サイズ1728円(500g)も用意。無糖は野菜のディップにしたり、カレーや味噌汁の隠し味にも使うことができる
百年落花生と付き合い続けた老舗の誇りが宿る
定番のピーナッツペースト
蓋を開けるや、ふわりと立ち上がる落花生の香り。滑らかな舌触りにまろやかな甘さが特徴的な加糖タイプのピーナッツペーストは食パンとの相性が抜群。伊藤国平商店の看板商品である。一方、個人的に重宝しているのが、何も加えず落花生だけで作った無糖タイプ。落花生の濃厚な香りとコクが凝縮し、ほんのりと落花生自体の甘みも感じられるので、私はこれだけで充分満たされてしまう。ハチミツを加えて好みの甘さにも調節でき、調味料代わりに使える汎用性の高さも気に入っている。 全国一の落花生産地である八街市に工場と店舗を構える伊藤国平商店。大正7年に落花生屋として創業し、百年以上にわたって殻付き落花生をはじめとする商品を作り続けてきた。成田山新勝寺の節分会で撒かれる落花生も毎年納めている。ピーナッツペーストを作り始めたのも古く、昭和30年代後半に業務用の製造を開始。三代目の伊藤寿一さんは「中一の頃、親についていって配達に行きましたよ。一斗缶に詰めて明治屋に納めたり」と懐かしそうに振り返る。昭和55年に瓶詰め商品を開発し小売も開始。その後、池波正太郎がペーストを取り寄せたことが知られるようになり、不動の定番商品となった。 各方面から長年支持され続けているのは、単に老舗だから、千葉県産落花生を使っているから…だけではない。ものづくりに対する妥協のない姿勢が品質の高さと信頼に繋がっているからなのだ。その象徴とも云えるのが、焙煎の前と後に行う〝選別〟作業である。虫食いや焦げ、未成熟豆などの欠点豆がないかを手作業で選別する。一粒こうした豆が混じるだけで風味に影響を及ぼしてしまうからだ。 〝焙煎〟も「生っぽくならないように芯から煎る」という、熟練の技が求められる。「特に新豆の時は、豆の水分量にばらつきがありますので火加減が難しい」と寿一さん。また、豆は深く煎るほど香りが立つが苦味も強くなる。そのため、どのくらい熱を加えるか「いい塩梅の許容の幅」を常に見極めなければならないのである。 そして、ペースト作りで豆を挽く際に使われるのが、〝黒御影石のローラー〟。石の自然放熱により香りが飛びにくくなる。今ではほとんど生産されていない、受け継がれてきた貴重なこのローラーも、豊かな風味の理由なのだった。 こうして届けられる伊藤国平商店の味。新豆の季節に老舗の矜持を、美味しさと共に感じてみたい。
(取材・文:沼尻亙司、撮影:織本知之)

1.人の目と手で丁寧に選別。毎日のこの地道な作業が、実は贈答用に耐え得る千葉の落花生の美味しさを支えている。この日はペースト用の深めに焙煎された落花生を選別しており、部屋中が香ばしい匂いで満ちていた 2・3.上部の器具で粗く砕いた後、下に鎮座する黒御影石の三連ローラーですり潰す 4.仕上げに攪拌し、より滑らかにする 5.充填作業 6.売店ではペーストのほか、殻付き落花生やバタピー、砂糖がけなど、多彩な商品が揃う
住所 〒289-1115 八街市八街ほ35
電話番号 043-444-1125
営業時間 9:00-16:30
定休日 日曜、祝日
WEB https://ito-peanut.com
販売・お取り寄せ 店舗で販売、オンラインショップで受付
※2024年11月号に掲載
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