【連載-いっぴんさん】小倉商店(たね倉)の「Sinapy シナピー」(館山市)

【Sinapy シナピー】6袋(1個包装内に2個入り)入りの箱詰めで1684円(税込)。落花生は木更津市の「落花生工房かずさ屋」の落花生を、味噌は佐倉市の「ヤマニ味噌」を、あんは館山市「須藤牧場」のジャージーミルクジャムを使用したシナモンミルクあんを使っている。オンラインでは様々な形の最中種(皮)を買い求めることができる

最中の皮を焼き続ける老舗が生み出す
新しい落花生最中

 県内各地にある和菓子店や落花生店で作られている落花生最中は、県外の人へお土産に持っていくと、形の可愛らしさも相俟って必ずと言っていいほど喜ばれる。それらの最中は餡に落花生の甘煮が入っていることが多く、それぞれの美味しさがある。だが、「小倉商店」が今年になって生み出した落花生最中「Sinapy」は、既存の最中とはあらゆる点で異なる。その魅力を探るため、館山にある工房を訪ねた。  工房の扉を開けると、ふわりと香ばしい匂いに包まれた。金型で最中種…いわゆる最中の皮が焼き上がったところだ。「焼くのは熟練の技術が必要。シナピーは味にインパクトを出すため、強めに焼くようにしてます」。そう解説してくれたのは、小倉商店四代目の小倉輝一さんだ。  創業117年。明治から米卸として商い、先代が最中種の焼成機を導入して製造を本格化させた。今や県内で数少ない最中種の製造所となっている。そんな小倉商店の自慢は、なんと言っても「安房地域の餅米を原料に、製粉から焼き上げるところまで」を一貫して行うこと。倉庫で一年寝かして程良く水分を飛ばした餅米を自家製粉し蒸す。板状にした生地を型に並べて焼けば、最中種が出来上がるが、「餅の香ばしさを生かすことが大事」と小倉さんが強調するように、餅米の風味を損なわず、均一に焼き上げるのが腕の見せ所となる。中房総地域にある某有名最中店をはじめ、各地の和菓子店が小倉商店の最中種を使っているのも、その技術と品質があってこそである。  そして最中種に包む餡。これがなんと、ミルク餡にシナモンの香りを利かせたハイカラな餡。そこに落花生の甘煮ではなく、千葉の郷土食としてお馴染みの「落花生味噌」が加わるのだ。「子供の頃から母がよく落花生味噌を作ってて、ご飯に載っけて食べてたんです」と小倉さん。その食卓の記憶とミルク餡を合わせてできたのが、このシナピーなのだ。  さっそくひとつ戴くと、まず、ふわっとした最中種の食感と香ばしさ。そしてミルク餡のコクのある甘みと落花生味噌のほんのりとした甘しょっぱさが、絶妙の相性を成す。ついもうひとつ…と手が伸びてしまう。「今、最中を食べたことがないっていう子供が多いんです。だからこそ、若い方に食べてほしい」と語る小倉さんだが、笑いながら、こう付け加えた。「落花生味噌をもっと知ってもらいたい。やっぱり、千葉の味ですから」と。

(取材・文:沼尻亙司、撮影:織本知之)

1.この製粉機で餅米を米粉にする 2.米粉に水を混ぜて蒸し、餅にする 3.板状だった餅の生地を金型に入れて焼くと、この通り。火加減を窺いながら焼成機の回転速度を調整し、型からはみ出た生地をエアーで飛ばす。これを同時に行う正に職人技。夏場は暑さとの戦いになる 4.型から外した最中種 5・6.ミルク餡に載せる落花生味噌。カリッと焼きあげた薄皮付きの落花生を使う。郷土食としての伝統を踏襲することを意識しているという

店名 小倉商店(たね倉)
住所 〒294-0045 館山市北条1134
電話番号 0470-22-0365
営業時間 8:00-18:00
定休日 日曜・祝日
WEB https://tanekura.jp/
販売・お取り寄せ 【販売箇所】海のマルシェたてやま(館山市)、グリーンファーム館山(館山市)、里のMuji みんなみの里(鴨川市)で販売 【お取り寄せ】webショップで受付

※2024年2月号に掲載
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