【連載-いっぴんさん】珈琲館サルビア(館山市)のバレルエイジドコーヒー

南房総市で製造されたラム酒の熟成樽に寝かしたコーヒー豆を自家焙煎。豆100g1296円、ドリップパック10g×4個1000円。店内では1杯693円で提供。ブラックでもおいしく味わえるが、「生クリームを入れて飲むとすごく相性がいいんです」と鈴木さん。ラム酒の華やかさと生クリームのコクのあるクリーミーさがデザートのようなコーヒーを演出する。ぜひ試していただきたい1杯だ。

同級生とのコラボレーション
コーヒーとラム酒の香り高き出会い

 1971年、館山駅東口にレストランとして創業したサルビア。程なくコーヒーの自家焙煎を開始し、1984年に現在店舗がある場所に「珈琲館サルビア」をオープンし今に至る。「50年かけないとできないものも当然ありますが、一日一日をしっかりやっていくということを常に考えています」と、老舗を担う心構えを語るサルビア二代目の鈴木将仁さん。「館山で喫茶といえばサルビア」と、世代を超えて愛され続けているのも頷ける。  そんなサルビアで昨秋、新商品「バレルエイジドコーヒー」が誕生。ラム酒を熟成させた樽に生豆を寝かせ、香り付けをしたコーヒーだ。そのラム酒を製造しているのが昨年1月号の本連載で掲載した「ペナシュール房総(房総大井倉蒸溜所)」(南房総市)。作り手の青木大成さんと鈴木さんは、なんと高校時代の同級生なのだという。そんな地元の縁から、千倉産サトウキビを使ったラム酒と、館山で焙煎したコーヒーとのコラボレーションが実現した。  コーヒー豆を熟成させる樽はラム酒の香りで満たされており、この中に豆を置いておくと、その香りがじっくりと豆に移っていく。「豆の水分量と香りのバランスを考慮して試行錯誤し、ベストな期間で熟成させています」。その間、香りムラが出ないよう、毎日樽を転がすことも忘れない。  バレルエイジドコーヒーを戴くと、香りの華やかさに驚かされる。ドリップしている最中から辺りは芳香さに包まれた。決して酒臭さはなく、コーヒーの味わい深さにラム酒の優雅な香りがうまく重なり合っているような印象だ。「ラム酒とコーヒー、お互いの良い部分を殺さず融合させるイメージ」と語る鈴木さん。そのために、ブラジル系の豆を軸にブレンドし、焙煎度合を工夫した。「浅煎りにしてフルーティーさを出しちゃうと、せっかくのラムの華やかさが分かりにくくなる。かつ、苦くし過ぎないで焼く。そのバランスが大切です」。その独特の風味が注目され、現在はバーからノンアルコールドリンクとしての引き合いもあるという。  「地元の食材が関わるコーヒーとして、地域の新しい産品になれば」と話す鈴木さん。さらに、豆を寝かした樽を醸造所に戻し、再びラム酒を仕込むという取り組みも始まり、お互いに良い刺激を与え合っている。老舗のコーヒー店が地元の同級生とともに試みるチャレンジ。今後、どのように展開していくか、楽しみである。

(取材・文:沼尻亙司、撮影:織本知之)

1.ラム酒の熟成に使っていた樽にコーヒーの生豆を入れ寝かせる 2.豆全体に香りが付くよう、毎日樽を転がす 3.ラム酒の華やかな香りと、コーヒーの味わいの双方を生かした焙煎を心がける 4.湯を注ぐとたちまち芳香さに満ちた香りが舞い上がる 5.店内ではハンドドリップしたバレルエイジドコーヒーを味わえる 6.落ち着いた喫茶室でコーヒー時間を過ごすのもおすすめ。もちろん、コーヒー豆の販売も行っている

店名 珈琲館サルビア
住所 館山市北条2576
電話番号 0470-23-2341
営業時間 10:30-17:00(LO16:30)
定休日 水曜(月に数回火曜休みあり)
WEB https://salvia-coffee.com/
販売・お取り寄せ 店舗のほか、館山・南房総市内の主要な道の駅で販売。オンラインショップでも受付

※2025年3月号に掲載
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