【連載-いっぴんさん】田谷ミートセンターの「お肉屋さんのコンビーフ」(東庄町)

国産牛100%のコンビーフ。100g560円(直売所価格/冷蔵保存)。加熱調理してあるため、そのまま食べられる。パンに挟んだり炊き立てご飯に載せるのはもちろん、卵と合わせてユッケ風にするなどアレンジして味わうのもおすすめだ。

お肉の町の加工のプロが手掛けるコンビーフ

 牛肉を塩漬けして作られる保存食、コンビーフ。田谷ミートセンターの作るそれは、後味の引きが良いあっさりとした味わい。それでいてまろやかなコクがジュワリと口の中で広がる。  「肉そのものの牛脂だけで、ほかの脂は使っていません。コラーゲンもたっぷりです」と胸を張る、田谷ミートの木内拓也さん。国産牛100%のスネやバラ肉を約二週間塩に漬けて熟成。その後、ボイルしながら牛脂を抽出し、「ほぐし」の工程に移る。血管や筋を取り除きながら、牛脂を加えて馴染ませていくのだが、この手間があることで、ぼそぼそしないで滑らかな口当たりになる。牛脂を加える量も風味の強弱に影響を与えるため、気の抜けない作業だ。肉の美味しさを感じて欲しいと「香辛料は入れません」と木内さん。肉屋としての矜持をコンビーフに込める。  田谷ミートは1962年に田谷精肉店として創業。封を開ければそのまま食べられる手軽さから、「お取り寄せ」や「キャンプ飯」などでコンビーフが人気だが、実は田谷ミートの真骨頂は「豚肉」。こちらも紹介しない訳にはいかない。  東庄町は千葉県内でも養豚の盛んな地域。田谷ミートの直売所にも、地元の「東の匠SPF豚」「林SPF」といった銘柄豚の精肉が並ぶ。だが、さらに驚いたのは、加工場に連接して東庄町の食肉処理施設があることだ。この日、加工場にお邪魔した際、木内さんが「この豚肉は今朝屠畜したものです。豚肉をすぐに加工して販売できるという、新鮮なお肉を届けられることがうちの強みです」と話していたのが印象深い。  加工に関しては田谷ミートの現社長、四代目の田谷雄一さんが修業時代に加工技術を学び、「自分で食べて美味しいものを届けたい」と始めた。自家製のロースハムやベーコン、レバーなどを手掛け、ソーセージに至っては県内で著名なベーカリー「ピーターパン」でも採用されている。コンビーフもその流れの中で生まれた商品だ。  四年前にオープンした工場併設の直売所は「手軽に地元の肉を買いたい」と、地元の声に応えたもの。今や、蒸したてを食べられる大振りの「東庄ポークのうまい豚まん」が観光客にも人気だ。  そうして食べる人たちに向けて視線を注ぎ続けてきた田谷ミート。生産地で加工から販売までを一貫して行うことのできる強みを活かしながら、今後も新たな展開にチャレンジし続ける。

(取材・文:沼尻亙司、撮影:織本知之)

1・2.塩漬けし、ボイルした牛肉を、牛脂を混ぜ合わせながら丁寧にほぐしていく。この際、目視で血管や筋を取り除いていく 3.計量。この後、パック詰めをして加熱殺菌するため、自宅では非調理で、封を開けたそのままの状態で食べることができる 4.こちらは豚肉の解体作業。隣接の食肉処理施設から一切外に出すことなく枝肉が運ばれてくる 5.ーセージなど、自家製の加工品も多彩 6.直売所では精肉、加工品、惣菜などを販売

店名 田谷ミートセンター
住所 〒289-0601 香取郡東庄町笹川い4714
電話番号 0478-86-0220
営業時間 10:00-17:00
定休日 日曜・月曜
WEB https://www.taya-meat.com/
販売・お取り寄せ 上記直売所のほか、道の駅水の郷さわらで販売 ●お取り寄せ/電話で受付

※2023年5月号に掲載
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