
【戸定珈琲月餅】「プリンス徳川カフェ」をふんだんに使ったご当地月餅。1個55g400円。3個セット、10個セットもあり。同じくご当地月餅として誕生した「松戸白宇宙かぼちゃ月餅」「与佐ヱ門梨月餅」も同価格で用意。松戸市がパートナーシップ協定を結んだドミニカ共和国コンスタンサ市にちなみ、ドミニカ産カカオを使ったショコラマーラーカオも開発している
歴史ロマンに漂うビターな香り 松戸のご当地月餅
旬の食材を取り入れた個性あふれる料理を提供してくれる「中国料理天廣堂」。代表の廣田資幸シェフは「千葉県の名工」として表彰、「第一回千葉ガストロノミーAWARD TOP30」に選出された、名実ともに千葉県を代表する中国料理店である。 2013年に松戸で創業。廣田さんは近所の聖徳短期大学で兼任教員を勤めるほか、同校の文化祭では天廣堂ブースを出店するなど、松戸との密着ぶりも知られている。そんな地元愛を表現したのが、ご当地月餅シリーズだ。 現在あるご当地月餅は三種類。松戸出身の宇宙飛行士、山崎直子さんが宇宙で研究に使った和かぼちゃの種から育てたかぼちゃを素材にした「松戸白宇宙かぼちゃ月餅」、梨園「与佐ヱ門」の梨を使い、梨の名産地を表現した「与佐ヱ門梨月餅」。そして、一番最初に商品化されたのが、この「戸定珈琲月餅」である。 水戸藩最後の藩主・徳川昭武が明治期に過ごした「戸定邸」は松戸の観光名所として親しまれているが、実は昭武は1987年の渡欧の際、コーヒーを愛飲していた。この史実を元に「サザコーヒー」(ひたちなか市)が深煎りのフレンチローストで往時のコーヒーを再現したのが「プリンス徳川カフェ」だ。 このコーヒー豆を使った戸定珈琲月餅。中にはローストしたクルミの入った蓮の実餡がずっしり。その甘やかな香ばしさが口に広がるや、キリッとしたコーヒーのほろ苦さが溶け合い、端正な味わいを演出する。月餅作りを担う調理部チーフシェフ、久山宗克さんは、「コーヒーとしての特徴を出すのに様々な工夫が必要でした」と振り返る。 月餅は薄力粉とシロップ、ピーナッツオイルを混ぜ合わせた生地で餡を包み、型で抜いて焼き上げるのが基本。その工程中、特に気を使うのが生地作りだ。「湿度などの具合で生地の状態が変わるので、毎日調整が必要。良い塩梅の生地でないと、うまく型から抜けなかったり、焼く時に割れちゃうんです」。シロップとオイルの配合比率が企業秘密なのは、それだけ繊細さを必要とする仕事であることを意味する。さらに、そこにコーヒーを加えていくというシビアな作業。コーヒー感を出したいが苦すぎてもいけない。絶妙なバランスがあってこの月餅は誕生したのだ。 「土地柄で料理が変わるように、焼菓子でもその土地らしさを表現できたら面白いですよね」。地元素材を使った菓子をこれからも生み出してみたいと語る久山さん。次なる逸品が楽しみだ。
(取材・文:沼尻亙司、撮影:織本知之)

1.薄力粉にフルーツシロップ、ピーナッツオイル、そしてコーヒー粉末を入れて生地を作る。シロップにはコーヒーの抽出液を、オイルにもコーヒー粉末を加えている 2.コーヒー粉末を混ぜ合わせた蓮の実餡。各素材にコーヒーの風味を加える徹底ぶり 3.生地で餡を包む 4.包んだ餡はこの使い込まれた木型で型をとる 5・6.強い圧をかけることで綺麗に模様が浮かび上がる 7.オーブンで焼く 8.焼き上がり直後。エッジのきいた模様が美しい
住所 〒271-0092 松戸市松戸1139-1
電話番号 047-382-5250
営業時間 11:30-LO14:30/17:30-LO21:00
定休日 不定休
WEB 中国料理 天廣堂
販売・お取り寄せ レストラン併設ショップ「天廣堂市」で販売、オンラインショップで受付
※2025年2月号に掲載
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