
【ピーナッツキャラメルバターサンド】千葉県産落花生と北海道産バターを使用したピーナッツキャラメルバターサンド。サブレにはピーナッツパウダーが、バタークリームにはピーナッツペーストが使われている。工房店頭価格1個390円。要冷蔵。食のちばの逸品を発掘2024審査員特別賞を受賞。
贅沢に落花生の風味を堪能 千葉に新しいピーナッツスイーツ
この連載ではこれまで幾度も落花生を活用した〝いっぴん〟を紹介してきたが、それは落花生が千葉県の象徴とも云える農産物であり、個人的にもひときわ愛着があるからである。そんな中、千葉の落花生を使った新たなお菓子が誕生したと聞き今春、「菓子屋 Norram」の工房へと向かった。 菜の花咲く草むらからキジの鳴き声が聞こえてくる…そんな長閑な茂原市郊外の風景の中に、小さな工房直売所がある。可愛らしい店から姿を見せたのがパティシエの御須郁代さんだ。さっそく御須さんが、自ら開発した「ピーナッツキャラメルバターサンド」を披露。これがまた実にキュートな表情のお菓子で、ちょこんとした佇まいに表面の落花生模様が良いアクセントになっている。 もちろん、その魅力は見た目だけではない。ひと齧りするや、ほろりと口溶けの良いピーナッツサブレから香ばしさがふわっと立ち上がる。その刹那、サブレに挟まれたピーナッツバタークリームのしっとり滑らかな食感が舌を撫で、コクのある甘やかな味わいが口の中を満たしてゆく。すると、クリーム内に隠されていたビターな塩キャラメルがキリリとエッジの効いた塩気を放ち、単なる甘さに溺れることなく、落花生の香りとコクを活かした味わいの輪郭がしっかりと際立つ。異なる食感が押し寄せ、劇的に風味が展開し、落花生というアイデンティティに帰結する。「塩味の加減次第でピーナッツの香りの引き立ち方が全然違います」と説明する御須さん。落花生は煎り落花生の代表選手である千葉半立種を用い、薄皮も敢えて加えて香ばしさを強調している。塩もうま味が特徴的なイギリスのシーソルト「マルドン」を加えて、しょっ辛さが味に顕れてしまわないよう、その配分に試行錯誤した。ひとつのお菓子に対する風味のディテールにまったく妥協がない。 そんな御須さんにとって、料理人やパティシエになることは子供の時からの夢。フレンチレストラン等で腕を振るい、チョコレートショップの製造責任者も務めるなど、そのキャリアは20年以上。そして昨年3月、地元の茂原で念願の工房を構えることができた。ピーナッツキャラメルバターサンドについては「何年も前から構想を考えていて、試作は相当しました」と、満を持してのデビューだった。「千葉の特産品を使って、新しいお土産品を作りたくて」と笑う御須さん。この千葉のおいしさで笑顔になる人は、これからも増え続けるに違いない。
(取材・文:沼尻亙司、撮影:織本知之)

1.ピーナッツペーストと北海道産バターを混ぜ合わせてバタークリームを作る。軽い食感にするため空気を入れ込むように攪拌する 2・3.クリームを型に絞り出し、その上に塩キャラメルを入れ、再びクリームを絞る。この三度の手間で独特の風味の展開が生まれる 4.サブレの模様付け 5.サブレをオーブンで焼く 6.焼き上がったサブレでクリームを挟む 7.工房直売所ではケーキやクッキーなどの販売も。オープン日はインスタグラムをチェック
住所 〒299-4113 茂原市法目57-2
電話番号 080-1150-2736
営業時間 12:00-17:00
定休日 不定休
Instagram https://www.instagram.com/KASHIYA_NORRAM/
WEB https://norram.base.shop/
販売・お取り寄せ 工房直売所の他、JA長生ながいき市場、旬の里ねぎぼうず、道の駅むつざわつどいの郷で販売 、オンラインショップで受付
※2024年6月号に掲載
※掲載されている情報や写真については最新の情報とは限りません。必ず事前に公式サイト等でご確認の上、ご利用ください